「できる」と「やっていい」は違う ― 焼きたてパン屋さんに学ぶ、AI時代の仕事の流れ

「できる」と「やっていい」は違う ― 焼きたてパン屋さんに学ぶ、AI時代の仕事の流れ
この記事の結論
機械に余力があっても、焼くのはお客さんが食べてくれる分だけ。AIで「できること」が増えた今こそ、試すことと、流れ全体に照らして「やっていいか」を見極めることの両方が、利益として手元にお金を残す鍵になります。
この記事でわかること
  • 能力があるからといって、作っていいわけではない。流れのペースを決めるのは、いちばん詰まっている所(パン屋ならお客さんの数)
  • AIは性能の良すぎる「パン焼き機」。前提を見直さないと、使われない資料やアプリが増え、会社がオーバースペックになる
  • 試すことは大切。そのうえで「詰まりが楽になるか」「お客さんに届くか」「お金が残るか」で見極める
目次

研修で見せていた、パン屋さんのビデオ

昔から、TOCの研修やコンサルをするときに、あるビデオを見せて考えてもらうことがありました。

焼きたてのパンを出しているパン屋さんの映像です。
お客さんの数に合わせて、焼きたてのパンをぴったり出していく。
そのためには、作る所から売る所まで、仕事がよどみなく流れていなければなりません。
まさに、TOCそのものなんです。

焼ける量と、焼くべき量は違う

そのお店には、もっとたくさん焼ける機械がありました。
でも、能力があるからといって、一気に焼くわけではありません。

焼きたてを食べてくれるお客さんの数に合わせて、出せる分だけを焼く。
それで十分なんです。

もし機械の力いっぱいに焼いたら、どうなるでしょう。
お客さんの数は変わらないので、パンは棚に並んだまま冷めていきます。
焼きたての価値はなくなり、売れ残りは廃棄になる。
材料も、手間も、電気代も、そのまま損になってしまいます。

TOC(制約理論)を生んだゴールドラット博士は、小説『ザ・ゴール』の中で、「人や機械を動かすこと」と「その働きが本当に役に立つこと」は違う、と繰り返し伝えています。
流れ全体のペースを決めているのは、いちばん詰まっている所です。パン屋さんでいえば、焼きたてを買ってくれるお客さんの数です。
それ以外の所がどれだけ頑張っても、出てくるのは「つくりすぎ」だけなんです。

機械は100個焼けるが、焼きたてを買うお客さんは40人。力いっぱい焼くと売れ残りが出て、お客さんの数に合わせて焼くとムダが出ないことを比べた図

機械があるからといって、作っていいわけではない。
私は、そういう研修をしていました。

AIで、「できること」が一気に増えた

いま、AIがいろいろなことをできるようになりました。
資料づくり、文章、画像、動画、アプリ、業務の自動化。
少し前まで外注するしかなかったことが、手元でできるようになっています。

これは、パン屋さんにとんでもなく性能の良い機械が入ったようなものです。
これまでの仕事の前提が、大きく変わります。

けれども、前提を見直さないまま仕事を進めていくと、どうなるか。
作れるものを、作れるだけ作ってしまう。
使われない資料、だれも開かないアプリ、確認だけが増える自動化。
会社全体が「オーバースペック」になっていくのは、目に見えています。

AIでできること(資料・文章・画像・動画・アプリ・自動化)を作れるだけ作ると、使われない資料やアプリが増える。詰まりが楽になるか、お客さんに届くか、お金が残るかを問う図

試してみることは、大事

誤解のないように言うと、新しいことを試すのに反対しているわけではありません。

「こんな仕事もできるようになった」と、いろいろやってみること。
やれるかやれないか、1回やってみる。新しい機能を入れてみる。
これは、「自分には無理だ」という心のメンタルブロックを外すうえで、とても大切です。

いまのAIの進化は、とても速い。
実際に触ってみないと、気づけないことのほうが多いくらいです。
だから、試すことを否定する意味はまったくありません。

でも、お金は残っているか

ただし、それと「現場で、利益としてお金が残っているか」は、別の話なんです。

試して、できると分かった。
そこで次に考えたいのは、それが流れ全体のどこに効くのか、ということです。

いちばん詰まっている所が楽になるのか。
お客さんに届くものが増えるのか。
最終的に、手元にお金が残るのか。

ここに効かないなら、どれだけ見事にできても、棚で冷めていくパンと同じです。
「できる」と「やっていい」は、違うんですよね。

試す場と、気づく場をつくりたい

だからこそ私は、経営者のみなさんが、いろいろなことを試せる場、そして気づきを得られる場をつくりたいと思いました。
それで、リアルのAI研修をたくさんやっていこうと決めたんです。

実際に手を動かして「できる」を体験する。
そのうえで、自分の会社の流れに照らして「やっていいか」を考える。
この2つがそろって、はじめてAIが利益につながっていくのだと思います。

まず試してみる、効くかを見極める、続ける・やめる、の3ステップを示した図

このホームページで何かに気づいてもらったり、Instagramで理解を深めてもらったり。
そんなきっかけになれたら、うれしいです。

あなたの会社のAIは、焼きたてを、ちょうどいい量だけ焼けていますか?

※AIの進化はとても速いため、少し前のコラムでは前提が変わっていたり、今では当てはまらない内容になっていたりすることがあります。すべての記事を常に最新に保つのは難しいため、取り入れるときは最新の情報もあわせて確認してください。ここでは、私自身が実際に試して効果があったことを、その都度お届けしていきます。なお、TOC(制約理論)の基本の考え方は、AIが進化しても大きくは変わりません。

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