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「単純作業はAIに、判断は人に」。AIの使い方として、よく聞く分け方です。間違いではありませんが、この分け方だけでは、会社の成果はなかなか変わりません。
理由は、どの単純作業をAIに任せるかで、成果がまったく違うからです。このページでは、TOC(制約理論)を使って、AIに任せる仕事と人が決める仕事を分ける手順を紹介します。
「単純作業はAIに」だけでは成果が出ない理由
会社の成果は、仕事の流れの中でいちばん詰まっている場所、つまり「制約」で決まります。制約ではない場所の作業をいくらAIで速くしても、仕事は制約の前でたまるだけです。
たとえば、資料づくりをAIで半分の時間にしても、その資料を社長が確認するまで3日待つなら、お客様に届く日は変わりません。速くするべきだったのは、資料づくりではなく、社長の確認の流れでした。
TOCで見ると:制約以外の場所を改善しても、全体の成果は変わりません。AIを使う場所も同じで、「制約に効くかどうか」で選びます。制約の見つけ方は「制約の見つけ方 ― 3つの問いと5つのステップ」で解説しています。
分け方の2つのものさし
仕事を、次の2つのものさしで見てみます。
- 制約に近いか、遠いか:その仕事は、いちばん詰まっている場所の仕事か。または、その場所の時間を奪っている仕事か。
- やり直しがきくか、きかないか:間違えたときに、すぐ直せるか。お金、信用、人間関係など、取り返しのつかないものに関わるか。
この2つを組み合わせると、仕事は4つに分かれます。

A. 制約に近く、やり直しがきく ― 最優先でAIに任せる
制約になっている人が抱えている、下書き・集計・調べものなど。ここをAIに任せると、制約の人の時間が空き、会社全体が速くなります。AIを使う効果がいちばん大きい場所です。
B. 制約に近く、やり直しがきかない ― AIが材料をそろえ、人が決める
値引きの判断、採用、クレームへの対応など。決めるのは人ですが、判断に必要な材料や選択肢をAIがそろえると、判断の時間が短くなります。
C. 制約から遠く、やり直しがきく ― AIに任せてよいが、急がない
任せれば楽にはなりますが、会社の成果はあまり変わりません。Aが片づいてから取り組みます。ここから始めると「AIを入れたのに変わらない」になりがちです。
D. 制約から遠く、やり直しがきかない ― 人がやる。いまは手をつけない
AIに任せる理由がまだない仕事です。無理に変えると、効果よりも不安のほうが大きくなります。
5つのステップで、AIを使う場所を決める
TOCには、制約を改善する「5つの集中ステップ」があります。これをAIの使いどころに当てはめると、次のようになります。

- 制約を見つける:仕事がいちばんたまっている場所、いちばん待たされている人はどこかを探します。
- 制約をとことん活かす:制約の人が、制約の仕事だけに集中できるようにします。その人が抱えている周辺の作業を、AIに任せます(上のA)。
- ほかを制約に合わせる:AIで前の工程を速くしすぎると、制約の前に仕事がたまります。AIが作る量やタイミングを、制約が処理できるペースに合わせます。
- 制約そのものを強くする:ここで初めて、制約の仕事そのものにAIを入れます(上のB)。判断の材料をそろえる、確認の基準を決めるなど。
- 制約が移ったら、また1に戻る:AIで制約が解消すると、詰まりは別の場所に移ります。「前にうまくいったやり方」にこだわらず、新しい制約を探します。
この記事の内容を、自社で確かめるなら
ザ・ゴール式 AI活用5ステップ 早見表
AIを本格的に入れるのは「4番目」。効果が出る会社が守っている5つの順番を、1枚にまとめました。
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例:社長が制約になっている会社
見積もり、請求、採用、取引先対応のすべてが社長を通る会社を考えてみます。仕事は社長の机の前で止まり、社員は社長の返事を待っています。
- A(最優先でAIに):社長がやっている見積書の下書き、売上の集計、メールの返信の下書き
- B(AIが材料、社長が決める):値引きの判断、取引条件の変更、採用の最終判断
- C(あとで):社員の日報の整形、社内向け資料の見た目の調整
- D(いまはやらない):長年の取引先との関係づくり
このとき、社員の日報をAIで整える(C)より、社長の見積もりの下書きをAIに任せる(A)ほうが、会社全体はずっと速くなります。社長が見積もりから解放されれば、その時間を判断と営業に使えるからです。
自社でやってみる3つの質問
- いま、仕事がいちばんたまっているのは、誰の机の上ですか?
- その人がやっている仕事のうち、その人でなくてもよい仕事はどれですか?
- その仕事を間違えたとき、すぐに直せますか?
2と3の答えが「その人でなくてよい」「すぐ直せる」なら、それが最初にAIに任せる仕事です。任せ方は「ハーネス環境のつくり方」で解説しています。
EQで見ると:「自分の仕事がAIに取られる」と感じると、人は無意識に抵抗します。分け方を決めるときは、「その人にしかできない仕事に時間を使うため」という目的を、言葉にして伝えることが大切です。くわしくは「AIが現場に入らない理由 ― 抵抗の6段階」をご覧ください。
自社の仕事で、どこから手をつければいいか迷ったら、いまの仕事の流れを聞かせてください。