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パソコンが壊れると、育てた決まりも消える
このシリーズで作ってきた「決まりのファイル」や「スキル」(手順書)は、使いながら少しずつ育てるものです。AIがパソコンの中で動く使い方では、それらはパソコンのフォルダに置かれます。
パソコンが壊れたり、なくしたりすると、何か月もかけて育てた決まりや手順書が一度に消えます。もう1つ困るのは、AIにファイルを直してもらったあと、「前のほうがよかった」と思っても戻せないことです。
TOCで見ると、ふだんは目立たない危うさです。一度消えると、作り直しの時間がボトルネックになり、ほかの仕事を全部止めます。

GitHubは「直した記録ごと預ける保存庫」
GitHub(ギットハブ)は、ファイルを、直した記録ごとインターネット上に預けておける保存庫です。
| ふつうのクラウドの保存場所 | GitHub | |
|---|---|---|
| 向いているもの | 出来上がった資料、写真、動画 | 何度も直していく文章やプログラム |
| 残るもの | いまのファイル | いまのファイルと、いつ・何を直したかの記録 |
| たとえると | できあがった物を置いておく棚 | ゲームのセーブポイントがたくさん残る保存庫 |

手元のパソコンで「ここまで保存」の目印を付ける仕組みを Git(ギット)と呼び、その記録を預けるネット上の場所が GitHub です。
覚えておく言葉は5つ
むずかしい命令を覚える必要はありません。実際の操作は、AIに言葉で頼めば代わりにやってくれます。ただ、何を頼んでいるかが分かるように、次の5つの言葉の意味だけは知っておきます。

| 言葉 | 意味 | いつ使うか |
|---|---|---|
| リポジトリ | ファイルと、直した記録を一緒にしまう「箱」 | 仕事やプロジェクトごとに1つ作る |
| コミット | 手元のパソコンで「ここまで保存」と目印を付けること | AIに大きな直しを頼む前と、作業の区切りごと |
| プッシュ | 手元の目印(コミット)を GitHub に送ること | コミットしたあと、作業の区切りや1日の終わりに |
| プル | GitHub にある最新の状態を、手元に取り込むこと | 別のパソコンで作業を始める前に |
| クローン | GitHub の箱を、記録ごと新しいパソコンに丸ごと写すこと | パソコンを買い替えたとき |

コミットだけでは、控えはまだパソコンの中にあります。プッシュまでして、はじめてパソコンが壊れても消えない状態になります。
最初にする設定

- メールアドレスを隠す:GitHub の設定(Settings → Emails)で「Keep my email addresses private」をオンにします。この設定が効くのは GitHub の画面での操作だけなので、手元のパソコンで付ける記録(コミット)に使うメールアドレスも、GitHub が用意する公開用のアドレス(no-reply のアドレス)にするよう、AIに頼みます。直した記録に、個人のメールアドレスが残らないようにするためです。
- 箱は「非公開」で作る:リポジトリを作るときは、必ず Private(非公開)にします。Public(公開)にすると、決まりのファイルや手順書が誰でも見られる状態になります。
- 上げないファイルを決める:鍵(APIキー)やパスワード、お客様の情報が入ったファイルは、保存庫に上げないように除外のリスト(.gitignore というファイル)に書きます。AIに「上げてはいけないファイルを確かめて、除外のリストに入れて」と頼めば作ってくれます。
ふだんの使い方
AIには、次のように言葉で頼みます。
- 2台以上のパソコンで使うときは、作業を始める前に「プルして最新にして」
- 作業の区切りで「ここまでをコミットして」
- 「GitHub にプッシュして」で、パソコンの外に控えができる
- AIの直しが気に入らないときは「さっきのコミットの状態に戻して」

注意しておく3つのこと

1. AIとの会話そのものは残らない
AIとのやりとりの記録は、作業のフォルダの外にあることが多く、保存庫には入りません。会話で決めた大事なことは、決まりのファイルやメモに書き出させてから、コミットとプッシュをします。除外した鍵も保存庫には入らないので、別の決まった場所で管理します。
2. 大きなファイルは置けない
GitHub は、1つ100MiB(約100MB)を超えるファイルを受け付けません。動画や重い画像は別の保存場所に置き、GitHub には文章や手順書を置く、という使い分けにします。
3. 他人が公開している箱は、中身を確かめてから
公開されている便利なツールや指示集の中に、悪い命令が混ざっていることがあります。作った人や中身が分からないものは、AIに読み込ませたり動かしたりしません。
AI×TOC研究所での実例
AI×TOC研究所では、決まりのファイル、スキル、作業用のプログラムを「道具箱」と呼んでいる非公開のリポジトリにまとめ、GitHub に預けています。
- 作業を始める前に、必ずプルして最新にします。うまくいかないときは、作業を始めずに人間の責任者に知らせる決まりです。
- 作業の区切りごとにコミットします。1つの作業が終わるまで待ちません。
- プッシュは、何を送るかを人間の責任者に見せて、確認をとってから行います。
- 鍵の値と、動画・音声などの素材は道具箱に入れず、それぞれ別の決まった場所に置いています。
作業するパソコンを別の1台に移したときも、GitHub に預けた道具箱から、決まりのファイルと引き継ぎのメモを読むところから始められました。
まずやること
GitHub のアカウントを作り、メールアドレスを隠す設定をオンにしてください。そのうえで、決まりのファイルを置いているフォルダを、非公開のリポジトリとして預けるところまでをAIに頼んでみてください。
あなたの会社で、パソコンが壊れたら作り直せないファイルはどれでしょうか。