こんにちは、ワビタンです。
2024年の秋、青森・弘前のりんご農園で、2日間の社内研修をさせてもらいました。テーマは農業TOC。そこで、ずっと頭に残っている問いがあります。
「一人ひとりの得意を生かした作業分担は、TOCでいう”部分最適”になってしまうのだろうか」
今日はこの問いを、あの2日間のことと、いまのAIの話につなげながら考えてみます。
サイコロ4回で、会社の歴史をたどる
研修の最初は、ソフトパワー研究所が開発した「TOCダイスゲーム」でした。サイコロを振って作業を流していくと、工程のどこかで仕事が詰まる。その様子が、目の前でそのまま見えるゲームです。
第1ゲーム、第2ゲームでは、あちこちで渋滞が起きました。参加者の表情にも、少し戸惑いが浮かびます。
第3ゲームで、制約に合わせて全体の流れを整える「ドラム・バッファ・ロープ(DBR)」を入れると、空気が変わりました。「いい会社になってきた」「これなら利益が出ていそう」。そんな声が聞こえてきて、こちらまでうれしくなりました。

第4ゲームで価格の戦略を変えたときは、全員が「こんなに変わるんだ!」と声を上げました。
じつはこの流れ、この農園が実際に歩んできた道のりとよく似ていたんです。全体の枠を広げ、価格の考え方を工夫してきたからこそ、いまの農園がある。ゲームが、自分たちの歴史をなぞる時間になっていました。
1分で終わった、トラックへの積み込み
研修の途中、忘れられない場面がありました。
予定外に、運送会社のトラックが到着したんです。その瞬間、参加者全員がさっと立ち上がり、りんごの箱をバケツリレーのように積み込んでいきました。かかった時間は、わずか1分ほど。
「なんてリードタイムが短いんだろう」と、思わず見とれてしまいました。
しかも、誰かが指示を出していたわけではありません。それぞれが自分の持ち場をわかっていて、得意なところに自然と入っていく。適材適所で動いていることは、休憩中の何気ない会話からも伝わってきました。お昼休みには、みんなでスイカ割りをしたのもいい思い出です。

「個性を生かす」のは、部分最適なのか
2日目、冒頭の問いが浮かんできました。
TOCでは、それぞれの持ち場だけを良くしようとする「部分最適」に気をつけます。では、一人ひとりの得意に合わせた作業分担は、部分最適なのだろうか。
悩んだ末、予定していたワークショップを急きょ変更しました。取り組んだのは「全体の枠を見える化する」ことです。農園の仕事の全体像を書き出し、それぞれがどこに立っているのかを、みんなで確かめていきました。

そのとき頭にあったのは、金子みすゞの「みんなちがって、みんないい」という言葉です。
やってみて、気づいたことがあります。部分最適の問題は、個性そのものではないんです。問題になるのは、全体が見えないまま、それぞれが自分の持ち場だけを良くしようとすること。全体の枠が見えていれば、ちがいはむしろ強みになります。あの1分の積み込みは、まさにそれでした。

AIが入ると、「みんなちがう」が一気に進む
あれから2年ほどたち、職場の景色はずいぶん変わりました。
いまは、一人ひとりが自分なりのやり方でAIを使う時代です。資料づくりに使う人もいれば、調べものに使う人も、文章の下書きに使う人もいる。使い方は、それこそ「みんなちがう」。
それ自体は、とてもいいことだと思います。ただ、あの農園での問いが、ここでもう一度顔を出すんです。
AIで一人ひとりの作業が速くなると、仕事は速くなった人の先でたまり始めます。たいていは、確認や判断をする人のところです。作業はどんどん進むのに、「チェック待ち」「返事待ち」の山だけが高くなっていく。

しかも、AIの使い方は本人の画面の中にあるので、まわりからは見えません。誰が、どこで、どれだけ速くなったのか。全体の枠が見えないまま、それぞれが自分の持ち場だけを速くしている。これはまさに、AIが生んだ新しい部分最適なんだと感じています。
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AI導入で起きる「抵抗の6段階」診断シート
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AIを入れる前に、「全体の枠」を見える化する
だからこそ、AIを社内に広げる前にやっておきたいことがあります。あの農園で取り組んだ「全体の枠の見える化」です。
- 仕事の流れを、1枚に書き出す。受注から納品まで、どんな工程を通っているのか。付箋に書いて並べるだけでも、全体が見えてきます
- それぞれのAIの使い方を、持ち寄る。誰がどこでAIを使っているのかを、流れの上に置いてみます。速くなった場所と、たまっている場所の両方が見えるはずです
- 一番たまっている場所から、AIの使い方を考える。全体の成果を決めているのは、流れの中で一番遅い1か所です。そこに効くAIの使い方を、みんなで決めます

じつは弘前の研修でも、「この問いを、AIはどう考えるだろう」と、その場でAIに聞いて即興で動画を作りました。細かい言い回しには気になるところもありましたが、みんなで考えるきっかけとしては十分でした。AIは答えを出す道具というより、全体を一緒に眺めるための相手なのかもしれません。
ちがいを生かすのは、全体の枠
「みんなちがって、みんないい」。
この言葉は、AI時代の職場にこそ当てはまると思っています。ただし、全体の枠が見えていてこそ、です。
一人ひとりのAIの使い方がちがうのは、いいこと。そのちがいを、会社全体の成果につなげていく。TOCは、そのための地図になってくれます。
あなたの職場では、いま、どこに仕事がたまっていますか。
「うちの場合はどこだろう」と感じたら、オンラインで30分の無料相談で、一緒に全体の枠を眺めてみましょう。


