研修のために、ウェブアプリを作ってみた
先日、ある介護施設の社内研修で、ひとつ発見がありました。
いえ、正直に言えば、前から薄々感じていたことでもあります。
その研修のために、ウェブアプリを作りました。
部下に対するリーダーのあり方を、16コマ漫画の事例で見せる。
そこから感じ取ったことを話し合いながら、自分のリーダーとしての接し方を考える。
そんな流れを、1つのアプリにまとめたものです。
対面の研修で使うだけでなく、Zoomでも使えるオンライン教材にしたい。
そう考えて、ウェブアプリという形にしました。
工夫したところは、うまくいった
参加するメンバーの特性も考えて、使い方にも工夫を凝らしました。
アプリで2人組をつくり、自分の考えを画面いっぱいに大きく表示する。
それを、お互いに見せ合いっこする。
アプリの中で完結させず、リアルの話し合いにつなげる作りにしたんです。
この部分は、良かったと思っています。
スマホで「最初に戻ってしまう」
ところが、実際に使ってもらうと、思わぬ所でつまずきました。
ある方のスマホでは、漫画を少し前に戻そうとすると、どうしても最初の画面に戻ってしまう。
それが2度ありました。
そのたびに、もう1回やり直しです。
ほかの方はスムーズに進んでいるので、その方を待つ時間が生まれます。
研修の流れが、そこで一気に止まってしまいました。
TOCでいえば、グループ全体の進み方は、いちばん時間がかかっている所で決まります。
1人が止まれば、グループ全員が止まる。
研修も仕事と同じで、流れでできているんですよね。
「これはアプリに改善の余地があるな」と感じました。

目線が、ずっと下を向いていた
でも、いちばん引っかかったのは、操作のことではありませんでした。
スマホに自分の考えを入力する時間。
そして、目線がずっと下を向いたままになること。
研修を進めている私には、そこに違和感が残りました。
思い返せば、スライドばかり見せる研修や、パソコンをずっと見ながら作業させる研修の雰囲気が、私はどうしても好きではありませんでした。
目線がこちらに向いて、お互いに人間と人間として話し合う。
そういう動きの中でこそ、心が動く。
以前から、そう感じてきました。
画面ばかり見ている状態を、私は自分の中で「目が死んでいる」と表現して振り返ることがあります。
表情も、声も、身振り手振りも、画面の向こうには届きにくいんです。
EQ(感情の知性)の研修をしている立場からすると、ここは見過ごせない所でした。
同じ内容を、紙と付箋でやってみた
この介護施設では、毎月ちがう施設のリーダーたちが交代でグループを組んで研修をしています。
そこで次の回は、ちがうメンバーで、同じ内容を行いました。
今度は、16コマ漫画を紙に印刷。
書き込みは付箋を使う形にして、これまでの研修のスタイルに近づけてみました。
すると、グループの動きがまるで違いました。
場の空気が、はっきりと良くなったんです。
「この場合はどうだろう」がすぐに出てくる
差が出たのは、振り返りや、漫画を見直す場面でした。
アプリだと、「スマホを手に取る」「タップして戻す」という2つのアクションが挟まります。
そのわずかな手間で、話がいったん途切れてしまう。
紙なら、指をさすだけです。
「この場合はどうだろう」
「このコマのこの人は、こうだよね」
そんな議論が、すぐに出てきました。

前回のコラムで、アプリが現場の仕事を1つ増やしてしまう話を書きました。
研修でも、まったく同じことが起きていたんです。
話し合いの間に挟まる「ワンアクション」の差は、思っている以上に大きいんですよね。
リアルで集まれるなら、アプリを使わない
今回の研修を通して、自分なりの結論が出ました。
Zoomなど、オンラインで開くしかない場面では、作ったアプリが役に立ちます。
画面越しでも同じ漫画を見て、考えを見せ合えるからです。
スマホでの戻り方は、そのために直しておきます。
でも、せっかくリアルで集まれる場があるなら、極力アプリを使わない。
それが正解だと思いました。

AIでアプリが簡単に作れる時代になりました。
私自身、作るのはとても楽しいです。
だからこそ、「この場面に、本当に画面が必要か」を問い直したい。
人と人が顔を合わせられる時間は、それだけで貴重です。
その時間を、画面ではなく、お互いの顔を見ることに使ってほしいと思っています。
あなたの研修や会議では、参加している人の目線は、どこを向いていますか?
動画でも解説しています
このコラムの内容を、ワビタン(我孫子)が大森社長と一緒に、6分の動画で読み解いています。


