動画づくりが、毎日「2本目」で止まる
いま、経営者向けの漫画動画や会話FAQ動画を、AIで作っています。
台本はClaude、キャラクターの声はGoogleの音声AI(Gemini TTS)。
声の質には満足していました。
ところが、毎日きまって同じところで止まります。
1日に2本目を作り終えたあたりで、音声が作れなくなるんです。
原因は、音声AIの「1日に使える回数」の上限でした。
私の契約では1日100回まで。漫画1話(26セリフ)を作るのに35〜40回使うので、2本作ればほぼ使い切ります。
作画も編集も進められるのに、声だけが出てこない。
工場でいえば、一台の機械の前に仕掛品が積み上がっている状態ですよね。

最初に考えたのは「ツールを替える」こと
最初に浮かんだのは、別の音声AIへの乗り換えでした。
候補は、音声AIで評価の高いElevenLabs。月ごとの文字数で管理するサービスなので、1日の上限で止まることはありません。
ただ、乗り換えると声が変わります。
シリーズで続けている漫画の声が、途中から別人になる。
品質に不満がないのに、量の問題のために声を手放すのは、正直、筋が違う気がしたんです。
そこで、いったん乗り換えを保留にして、「なぜ止まるのか」をもう一段掘ることにしました。
上限を上げる道は、思ったより遠かった
次に考えたのは、上限そのものを上げることです。
GoogleのAPIは、支払い実績に応じて利用の「ランク」が上がり、上限も増えていきます。
私はいちばん下のランク。Googleに引き上げの申請も出していました。
自分で利用料金の上限を設定しているのが原因では、とも疑いました。
調べてみると、違いました。次のランクの条件は「支払い累計100ドル」。
私の直近30日の利用額は、約516円でした。このペースだと、条件を満たすまで2年以上かかります。
上限を増やす道は、待つしかない。
待っている間も、動画は毎日2本で止まり続けます。
増やせないなら、ムダなく使い切る
ここで、TOC(制約理論)の基本に立ち返りました。
ボトルネックが見つかったら、いきなり能力を増やす前に、まず「いまある能力をムダなく使い切る」。
ザ・ゴールでいう「徹底活用」です。
じつは以前、自分の声をAIに覚えさせたときにも、限られた回数をムダに使っていたことがありました。
今回も、見直してみると音声の使い方にムダがあったんです。
1セリフにつき1回ずつ、音声を作っていたんですね。
26セリフなら26回。読み間違いの作り直しを入れると35〜40回になります。
そこで、やり方を変えました。
- 同じキャラクターのセリフを、何本かまとめて1回で作る
- できた音声は、セリフの間の無音で自動的に切り分ける
- 読み間違いがあったセリフだけを、1本ずつ作り直す
仕組みはClaudeに作ってもらい、1話分を「1行ずつ」と「まとめる方式」で聞き比べました。
声のテンションは少し変わりましたが、気になる差ではありません。切り分けも正確でした。

回数は5分の1、作れる本数は4〜5倍に
1本あたりの音声の回数は、およそ8割減りました。
上限は1日100回のまま、何も変えていません。
それでも、1日に作れる本数は大きく変わります(作り直しを含めた見込み)。
| 動画の種類 | 1本あたりの回数(今→まとめる方式) | 1日に作れる本数 |
|---|---|---|
| 漫画1話(26セリフ・3人) | 35〜40回 → 7〜9回 | 約2話 → 約11話 |
| FAQ・ブログ解説(約40行・2人) | 45〜50回 → 7〜9回 | 約2本 → 約11本 |
| モーション解説(約55行・1人) | 約60回 → 9〜11回 | 約1本 → 約9本 |
| 縦ショート(8行前後) | 約10回 → 2回前後 | 約10本 → 約50本 |
おまけもありました。
これまでは1行ごとに7秒あけて作っていたので、50行なら待つだけで6分ほど。
まとめれば1回20秒前後で済みます。
ツールも替えず、お金もかけず、声もそのまま。
変えたのは、使い方だけなんです。
そして、ボトルネックが移った
1日に漫画を11話作れるなら、声はもうボトルネックではありません。
すると、別の場所が詰まり始めます。いま見えているのは、この3つです。
- 動画の書き出し(1本4〜6分)
- 私が確認してアップする時間
- 漫画の作画
とくに2つ目は、AIではなく私自身です。
AIが速くなるほど、最後に残るのは人間の確認と判断。
ボトルネックが人に移ってきた、ということなんです。
TOCでは、これを「ボトルネックが移る」と言います。
ひとつ解消すれば、次が現れる。
だから改善は一度で終わらず、ぐるぐる回り続けます。

会社のAI活用に置き換えると
実は今回の流れは、ザ・ゴールの「5つの集中ステップ」そのままでした。
- 見つける:止まっていたのは音声の1日上限だった
- 徹底活用する:上限は変えず、1本あたりの回数を減らした
- 他を合わせる:台本や作画を、音声のまとめ方に合わせて段取りする
- 能力を高める:ツールの乗り換えや上限の引き上げは、ここで初めて考える
- 次へ:ボトルネックが書き出しと人の確認に移った
AIを入れた会社でも、同じことが起きます。
「AIの利用上限が足りない」「ツールが遅い」と感じたとき、すぐに上位プランや別のツールに目が向きがちです。
でも、その前に聞いてみてください。いまのツールを、ムダなく使い切れているだろうか。
そしてもう一つ。
AIで現場が速くなったら、次に詰まるのは人の確認や判断かもしれません。
そこを見ずにAIだけ増やしても、会社全体の仕事は流れていかないんですよね。
みなさんの会社のAI活用は、いまどこで止まっていますか?
※APIの上限や料金、利用ランクの条件は変わることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
動画でも解説しています
このブログの内容を、ワビタン(我孫子)が3分の動画で読み解いています。


