上限を増やす前に、使い方を変える ― AI動画づくりで「ボトルネックが移った」話

上限を増やす前に、使い方を変える ― 1話の音声は35〜40回から7〜9回へ、1日に作れる漫画は約2話から約11話へ
この記事の結論
AIの上限に当たったとき、すぐにツールの乗り換えや上限の引き上げを考えがちです。でも先にやるのは、いまある能力をムダなく使い切ること。使い方を変えるだけで作れる本数は4〜5倍になり、ボトルネックは次の場所(人の確認)へ移りました。
この記事でわかること
  • 音声AIの1日上限で、動画づくりが毎日2本で止まっていた理由
  • 上限は変えず、セリフをまとめて作るだけで回数が約8割減った方法
  • ボトルネックが移る ― AIが速くなるほど、次に詰まるのは人の確認と判断
目次

動画づくりが、毎日「2本目」で止まる

いま、経営者向けの漫画動画や会話FAQ動画を、AIで作っています。
台本はClaude、キャラクターの声はGoogleの音声AI(Gemini TTS)。
声の質には満足していました。

ところが、毎日きまって同じところで止まります。
1日に2本目を作り終えたあたりで、音声が作れなくなるんです。

原因は、音声AIの「1日に使える回数」の上限でした。
私の契約では1日100回まで。漫画1話(26セリフ)を作るのに35〜40回使うので、2本作ればほぼ使い切ります。

作画も編集も進められるのに、声だけが出てこない。
工場でいえば、一台の機械の前に仕掛品が積み上がっている状態ですよね。

台本・作画は進むのに、1日100回までの音声で詰まり、編集が待ちになる動画づくりの流れ

最初に考えたのは「ツールを替える」こと

最初に浮かんだのは、別の音声AIへの乗り換えでした。
候補は、音声AIで評価の高いElevenLabs。月ごとの文字数で管理するサービスなので、1日の上限で止まることはありません。

ただ、乗り換えると声が変わります。
シリーズで続けている漫画の声が、途中から別人になる。
品質に不満がないのに、量の問題のために声を手放すのは、正直、筋が違う気がしたんです。

そこで、いったん乗り換えを保留にして、「なぜ止まるのか」をもう一段掘ることにしました。

上限を上げる道は、思ったより遠かった

次に考えたのは、上限そのものを上げることです。
GoogleのAPIは、支払い実績に応じて利用の「ランク」が上がり、上限も増えていきます。
私はいちばん下のランク。Googleに引き上げの申請も出していました。

自分で利用料金の上限を設定しているのが原因では、とも疑いました。
調べてみると、違いました。次のランクの条件は「支払い累計100ドル」。
私の直近30日の利用額は、約516円でした。このペースだと、条件を満たすまで2年以上かかります。

上限を増やす道は、待つしかない。
待っている間も、動画は毎日2本で止まり続けます。

増やせないなら、ムダなく使い切る

ここで、TOC(制約理論)の基本に立ち返りました。
ボトルネックが見つかったら、いきなり能力を増やす前に、まず「いまある能力をムダなく使い切る」。
ザ・ゴールでいう「徹底活用」です。

じつは以前、自分の声をAIに覚えさせたときにも、限られた回数をムダに使っていたことがありました。
今回も、見直してみると音声の使い方にムダがあったんです。

1セリフにつき1回ずつ、音声を作っていたんですね。
26セリフなら26回。読み間違いの作り直しを入れると35〜40回になります。

そこで、やり方を変えました。

  • 同じキャラクターのセリフを、何本かまとめて1回で作る
  • できた音声は、セリフの間の無音で自動的に切り分ける
  • 読み間違いがあったセリフだけを、1本ずつ作り直す

仕組みはClaudeに作ってもらい、1話分を「1行ずつ」と「まとめる方式」で聞き比べました。
声のテンションは少し変わりましたが、気になる差ではありません。切り分けも正確でした。

1セリフずつ作ると1話35〜40回、キャラごとにまとめて作り無音で切り分けると7〜9回

回数は5分の1、作れる本数は4〜5倍に

1本あたりの音声の回数は、およそ8割減りました。
上限は1日100回のまま、何も変えていません。
それでも、1日に作れる本数は大きく変わります(作り直しを含めた見込み)。

動画の種類1本あたりの回数(今→まとめる方式)1日に作れる本数
漫画1話(26セリフ・3人)35〜40回 → 7〜9回約2話 → 約11話
FAQ・ブログ解説(約40行・2人)45〜50回 → 7〜9回約2本 → 約11本
モーション解説(約55行・1人)約60回 → 9〜11回約1本 → 約9本
縦ショート(8行前後)約10回 → 2回前後約10本 → 約50本

おまけもありました。
これまでは1行ごとに7秒あけて作っていたので、50行なら待つだけで6分ほど。
まとめれば1回20秒前後で済みます。

ツールも替えず、お金もかけず、声もそのまま。
変えたのは、使い方だけなんです。

そして、ボトルネックが移った

1日に漫画を11話作れるなら、声はもうボトルネックではありません。
すると、別の場所が詰まり始めます。いま見えているのは、この3つです。

  • 動画の書き出し(1本4〜6分)
  • 私が確認してアップする時間
  • 漫画の作画

とくに2つ目は、AIではなく私自身です。
AIが速くなるほど、最後に残るのは人間の確認と判断。
ボトルネックが人に移ってきた、ということなんです。

TOCでは、これを「ボトルネックが移る」と言います。
ひとつ解消すれば、次が現れる。
だから改善は一度で終わらず、ぐるぐる回り続けます。

音声が流れるようになると、ボトルネックは書き出しと人の確認・アップに移る

会社のAI活用に置き換えると

実は今回の流れは、ザ・ゴールの「5つの集中ステップ」そのままでした。

  1. 見つける:止まっていたのは音声の1日上限だった
  2. 徹底活用する:上限は変えず、1本あたりの回数を減らした
  3. 他を合わせる:台本や作画を、音声のまとめ方に合わせて段取りする
  4. 能力を高める:ツールの乗り換えや上限の引き上げは、ここで初めて考える
  5. 次へ:ボトルネックが書き出しと人の確認に移った

AIを入れた会社でも、同じことが起きます。
「AIの利用上限が足りない」「ツールが遅い」と感じたとき、すぐに上位プランや別のツールに目が向きがちです。
でも、その前に聞いてみてください。いまのツールを、ムダなく使い切れているだろうか。

そしてもう一つ。
AIで現場が速くなったら、次に詰まるのは人の確認や判断かもしれません。
そこを見ずにAIだけ増やしても、会社全体の仕事は流れていかないんですよね。

みなさんの会社のAI活用は、いまどこで止まっていますか?

※APIの上限や料金、利用ランクの条件は変わることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

動画でも解説しています

このブログの内容を、ワビタン(我孫子)が3分の動画で読み解いています。

※AIの進化はとても速いため、少し前のブログでは前提が変わっていたり、今では当てはまらない内容になっていたりすることがあります。すべての記事を常に最新に保つのは難しいため、取り入れるときは最新の情報もあわせて確認してください。ここでは、私自身が実際に試して効果があったことを、その都度お届けしていきます。なお、TOC(制約理論)の基本の考え方は、AIが進化しても大きくは変わりません。

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